2026年10月18日(日)飯能まちなか散策ツアー(後半)

高麗横丁と大通りが交差する仲町の信号T字路へ。江戸時代、大通りでは六斎市(月6回開かれる定期市)である飯能縄市が開かれていました。その縄市の入口辺りであったことから、現在の入口電業さんの屋号は生まれたそうです。上町と下町が交互にお店を出していたそうですが、仲町は毎回出ていたそうで、やや特別扱いだったのでしょうか。

店蔵絹甚さんにお邪魔しました。「絹甚」は、篠原甚蔵、長三親子によって建てられたものです。篠原家は江戸時代から商いを営み、明治期になると、絹関連の品物を取り扱うようになりました。明治42年、「絹甚」は人の手に渡り、その後、甚蔵の娘で川越の小池家に嫁いだ小池奈賀が買い戻します。戦後は、奈賀の娘、小池トクが地元の教員をしていたため、昭和40年頃まで居住。トクの死後はトクの妹小池ヨシが相続しますが、ヨシの死去にあたり直系相続不在となりましたが、平成16年、相続財産管理人を経て 、取得を希望していた飯能市に修理費用と併せて寄贈すると遺言を残していただいたそうです。飯能のシンボルとなる建物を寄贈してくれた小池家には本当に頭が下がります。
土間に入ると立派な欅の1枚板があり、その真ん中に柱を立てて、板戸を組むとなんとシャッターのように閉めることができます。本当は柱がもう1本あったのですが、それは今はないため全ては閉められないのですが、その様子を見せてくれました。これを揚戸というそうです。非常によくできた造りで感心しました。

続いて山二鋼材が移転された後に入った「やまにわ」というシェアスペースにお邪魔しました。現在1Fには「本とビール・カモシカ」、アクセサリーなどのショップが数店、シェアキッチンなどが入っています。トークイベントなども行われているそうです。鉄製のフロアマットが山二鋼材を偲ばせてくれて、とても良いですね。

飯能小町公園とその向かいの飯能商工会議所会館です。公園は飯能市中心市街地活性化基本計画に盛り込まれたポケットパークの設置に基づき、飯能市が敷地を購入しました。公衆トイレと桜を1本植えるだけのシンプルでオープンなスペースで、朝市やマルシェなど様々なイベントに活用されています。商工会議所も西川林業で育まれた製材技術とCLTの新旧の木質技術を組み合わせた構造で、やまにわ~商工会議所~小町公園と続くスペースが一体性をもち、飯能の顔として素晴らしい空間づくりになっていることが分かります。

大野家の離れです。近代和風建築の装いが、北裏通りに味のある景観を与えてくれています。そして酒田屋。元は米穀商で蔵として利用していましたが、現在は居酒屋として親しまれています。2Fはスタジオとして利用されたことも。

春に広小路から歩いてくると、双木家の角の見事な桜が姿を現します。松やもっこくなど、庭木と建物のバランスがよく、こちらも北裏通りの景観の美しさをつくってくれています。

銀座商店街から細い路地を通り、旧・土肥歯科医院へ。ドイツ下見張りの外壁に連続した窓の外観、そして建物に絡まる蔦が完全にラピュタの世界観です。美しい設計は朽ちてもまた美しいのだと気づかされます。

旧飯能織物協同組合の事務所です。木造二階建ての洋風建築ですが、棟にシャチホコをかざっているなんともユニークな和洋折衷の建物です。平成30年に組合が解散してから、解体の心配がありましたが、これを保存活用していくという不動産会社が所有してくれているため、何とか存続しています。

吉川理容所や日替わりシェフのお店が入る銀座商店街の長屋建築。大正期に洋風な看板建築に改修したそうです。外壁は擬石造りで、銀座商店街の象徴のような外観です。ロビン・グッドフェローもアンティーク調の雰囲気がとてもおしゃれで、つい立ち止まってしまいますね。

そして、いよいよゴールにたどりつきました。イタリアンレストランのTre!。昨年の時点ではまだ空き家でしたが、「1+2」を営む高田氏が2店舗目としてこの建物を改修して使ってくれることに。大正期に建てられ、当初はカフェ・ダンスホールでしたが、その後に旅館として使われていました。昭和初期は、飯能が西川材や織物の集散地として賑わい、駅前にも人が集まる時代でした。モダンな娯楽施設として建てられた後、宿泊施設へ転用されたことは、当時の飯能の繁栄を物語っています。

一番の売りは卵の味が濃厚でクリーミーなエビとトマトクリームのオムライスです。たくさん歩きましたが、最後に素敵なご褒美が待っていました。いくつかのまちづくり団体が清掃活動をしたり、何とか存続をと願ったこの旧・新川長旅館がこんな素敵に生まれ変わることを誰が想像したでしょう。今回紹介した建物の数々も10年後にどうなっているかは分かりません。しかし、こうやって飯能の景観を守るべく立ち上がってくれる人たちがいることが、本当の飯能の財産ではないでしょうか。
(おわり)



